人生洋梨

哀しみのルート20

MaxonのコンプレッサーCP-9とCP9Pro+新旧比較

・共演

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かえるの子はかえるなのか...?

 RIDEのAndy Bell(アンディ・ベル)先生が90年代の現役バリバリの頃から今まで使い続けているキーペダルとのことで、IbanezCP9...ではなくマクソンのCP-9(マクソンのみハイフンあり。この違い大事。)を購入。

 だってアイバニーズのほうは無駄にプレミアがついてて高いんだもの。80年代初期のオールドだけどマクソンの方は中古で手頃な値段でそこそこ出てます。筐体も中身も同じだし良いでしょっ!ってことで。

 CP9と聞くと某海賊漫画の世界政府の諜報機関かなって思いますよね。エニエス・ロビー編はワンピースの中でも特に「立場によって変わる悪と正義」が描かれてて好きですね。ニコ・ロビンが泣くとこね。あ、漫画の名前出しちゃったよ。ていうか関係なっ!

 余談はさておき、後発のCP9Pro+の方が見た目は同じでも音は良くて完全上位互換じゃないのと思い、数年前に買って使っていたので、せっかくだから新旧で何がどのくらい違うのか比較してみたいと思います。

・は?

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モディファイ感あふれるしなんか汚い...

 いきなり脱線します。筆者はバカなので中古で機材を買うと興味本位で必ずバラして中身を見るんですが、なんだこれは、たまげたなあ。筐体の中と基板はあなた何があったのという程に汚れてるし、明らかにモディファイしたっぽい痕跡が...

 汚れは何かこぼしたか浸かるなどして不幸な目に遭ってしまったっぽい。接点復活剤とか吹きまくったのかなあ。なんか白いけど牛乳だったら嫌だなあ...まあしょうがねえなあということでバラして磨きました。あーあまた半日潰れちまったよ。

 バラして清掃の工程は割愛しますが、このマクソン9シリーズ、物理的に全バラはできません。スイッチ上のメーカーとモデル名が書かれたプレートが剥がせないのです...プレートを破壊すれば全バラできますが嫌なのでほどほどに清掃して切り上げました。

 どう見てもモディファイっぽいジャンパーと抵抗に関しては純正でこうみたいなので安心しました。古いエフェクターにはたまにあるんだよねこの雑仕様...IbanezCP9も含めてネットに上がってる他の個体も全部こうなってました。ハラハラさせるなあ。

・やっと本題

・裏面

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憧れの黒ラベル。ビールの話ではない。

 気を取り直して比較に入っていきましょう。画像はほどほどに清掃した後です。Pro+の方にはマジックテープを貼ってあります。裏面はラベルが違うだけで何も面白くありませんね。筐体は新旧で全くと言って良いほど変わりません。

・中身

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ここで中島みゆきの時代が流れる

 中身は完全にジェネレーションギャップですね。清掃の際に絶縁のスポンジを外してしまったので電池スナップにはテープを巻いています。あと配線の取り回しの都合上、この画像では新旧で上下が逆になっています。

 アナログ大好きな筆者は古い方が断然好みですね。早速電解コンデンサーを替えたくてウズウズしています。最近のは部品が小さくていじる気が起こりませんもの。まあデジタルのディレイとかと比べたら全然スカスカだけども。

 あまり詳しくありませんが、そもそもコンプレッサーとしての仕組みが違いそうですね。左はデカい一点もののICがキモなのはわかるけど、右はトリムもICもたくさんあってわけわからん。ノイズ対策とか色々含まれてるんでしょうね(テキトー)。

・音

 肝心な音ですが全然違います。本当は比較動画など上げたいのですがメンドクサイので割愛...見た目は同じだけど丸で別モンですね。こんだけ違うならせめて色だけでも変えて欲しかったです。ボスのディレイとかも同じだけど...あれはなんか雰囲気でわかるじゃん。

・古い方(CP-9) 

 ONにしただけでアンディの音が出る。Vapour Trailのコードを弾いて勝手に感動しました。まずコンプの性能うんぬんの前に、このペダルはハイが持ち上がるんですよ。ツマミでどうこうできるものではなくて、完全に回路の仕様。

 アンディはATTACK TIMEを最大にして使ってるみたい。LEVELとTHRESHOLDは0時~3時で適宜。これだとコンプらしさは薄れるので、クリーンブースター的な使い方なんでしょうね。筆者の手持ちだとEarthquaker DevicesのArrowsに近い感じ。

 強制的にハイがきらびやかに鳴るから音が抜けるんですよ。かと言ってギラギラとうるさい感じでもない。これってVOXアンプのあの感じかも。古いエフェクターだけどコンプでこの感覚は斬新ですね。RIDEのアンディパートコピーするなら絶対要ると思う。

 ATTACK TIMEを絞れば普通にコンプとして機能します。クリーンブースター的な使い方でもサステインは伸びるから独特。いつまでも弾いていたい気になりますね。古いので現代の基準ではノイズも大きめだし、純粋なコンプとしての性能はPro+に軍配が上がりますが...

・新しい方(CP9Pro+)

 本当に優秀なコンプだと思います。昔のと比べると違いがよくわかる。古い方はハイ上がりで味ではあるんですが、一方で現行のは本当に音質が変わらないんですよ。音質はそのままで音の粒は揃えてくれるので耳当たりの良い音になる。水道水のカルキ抜きみたいな感じ。

 元ザ・スミスジョニー・マーはこの使い方ですね。そもそもそれを真似たくて口コミを見てPro+を買ってるので。彼はDIAMOND COMPRESSORだけども。あれ高いんだよ。あとROSSもいいですね。どちらもそのうち自作してみたいと思います。

 あ、信号を検知するLEDが付いてるのも良いですね。まあ無くても良いけども。いじれるパラメーターもATTACK TIMEがRATIOに変わってるし、コンプレッサーとしてのコンセプトからして別ですね。見た目は同じなのに。

・総評

 結果的には、2つは同じ筐体でもコンプレッサーとして全く違うキャラクターを持っていましたね。変化がわかる系と原音重視系かな。変化がわかると言ってもダイナコンプみたいなパコパコ系ではないけども。

 古い方は良くも悪くも音が変わるので、積極的なサウンドメイキングの要素になり得ます。アンディがそうしたように。けど純粋なコンプとして使うなら断然現行をオススメしますね。古いしよほどRIDE好きなオタクしか買う必要はない気がするw

 原音重視系でもパコパコ系でもなくてハイ上がりだから、パーカッシブなカッティングとかベースのスラップ向きでもないと思う。本当にRIDE用。コンプというよりクリーンブースターとコンプがセットになりました!と考えた方がいいペダルですね。

 筆者は古い方をRIDE用に取っておいて現行は手放そうと思います。と言うのも、原音重視系のコンプは自作しようと思っていたタイミングだったので。Pro+はいつでも買い直せるしね。生まれる時代を間違えたから古い機材は肌に馴染むなあ。

 ちなみに良く見るとツマミやプレート、スイッチも形は同じですが微妙にモールドやテカリ具合が違います。古い方がテカテカして高級感がありますね。現行はちょっとチャチい感じ...古い方はバブル期ちょい前の製品ですからね。花の82年組

12弦ギターとThalia capo(タリアカポ)

・Thalia capo買いました

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高級外車のドアの取っ手っぽい

 ビンテージFenderの指板Rがきつい12弦ギターに合うカポを探していた筆者。カポにしては値は張るがいわゆる「高級カポ」として存在が知られつつあるThalia capo(タリアカポ)を購入してみたので記事にしておこうと思う。

・タリアカポって何ぞや

 一言で言うと、弦を押さえるゴム部分をギター側の指板Rに合わせて交換できる高機能なカポタストである。機能だけでなくデザインも洗練されており、「高級カポ」として2000円前後が相場の一般的なカポとは一線を画す存在となっている。

 製品には多くのバリエーションがあり、ギターのハードウェアのように金属部のメッキの色を選択できるだけでなく、インレイは希少木材や貝などの様々な素材の中から気に入ったものを選ぶことができる。

 今回購入したのはラインナップの中でもスタンダードな、クロームメッキで"Brazilian Lacewood"をインレイに使ったもの。より値は張るが、ド派手な貝のインレイやGibsonとのコラボなんてのも選べる。

 大阪の三木楽器が輸入代理店となっており、AmazonやYahooショッピング、楽天などで取り扱いがある。AmazonではB級品っぽいのがたまに割引で出てるので狙い目。気になった人は三木楽器のサイトをご覧ください。

www.miki.co.jp

・使用した感想

・交換可能なゴム部分

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これでもかと言うくらいの替えゴムが付属する

 タリアカポにおける機能上の要となる替えゴムは、標準サイズのものと、12弦ギターやウクレレバンジョーといった弦高が高い、あるいは弦のテンションが強い楽器向けの”ハイテンションラバー"がそれぞれ7種類1個ずつ、合計で14個付属する。

 ゴムの交換作業はとても簡単で、説明するまでもないほどである。ゴム部の長さは全14種類で共通して約57mmあり、12弦への対応はもちろん、ネック幅の広いギターやクラシックギターでも使える。12弦7カポでHotel Califolniaなんてのも余裕である。

 筆者はFenderのギターばかり使うので、6弦用に標準サイズの7.5R、12弦用にハイテンションラバーの7.5Rを使用している。ハイテンションラバーは標準より2mmほどゴムが分厚くなっており、弦のテンションが強く弦高の高めな12弦向きである。

・12弦ギターではどうか

 やはりカポのゴムが指板Rにマッチしている効果は大きい。汎用のカポとは違い全弦が均一な力で押弦され、12弦における、指板の端にある6コースの複弦と1コースの主弦がちゃんと鳴らない問題も解決された。

 だが12本の弦全部をちゃんと鳴らすには少しコツが必要。個人的にはもう少しカポ自体のバネの力が欲しいかもしれない。端の弦はコンスタントに鳴るが、フレットの間の最適な位置に装着しないと押弦の力が足りず、5〜3コースの複弦が鳴らなくなってしまう。

 汎用のカポでは指板Rよりゴムがフラットなため、端の弦を押弦できない代わりに、真ん中の弦が強く押さえられていたのでこの問題は生じなかった。まあポジションさえ合えば今までのどのカポよりまともに使えるのでヨシとしよう。

 これでもカポ自体のバネの力は強い方だと思う。あまり強すぎてもネックに負担が掛かるということなのだろう。製品の問題というより12弦の張力が異常なだけだしね。ゲージの低い弦を張るなど色々工夫して使いたいと思う。

ユーザビリティ

 直感的な使いやすさは、同じバネ式でもkyserやDunlopなどトリガー型の方に分がある。トリガー型の方が人間工学的には握りやすい。タリアカポに関してはデザインを重視した結果でのこの形だろう。まあ慣れの問題である。

 あと重いという意見があるが、個人的にはそうでもない。カポの重量は音にも影響するので一概には言えないが。多少重めではあるが、想像を絶するほどズッシリという感じでもなく、ネックに悪影響があるとかはないと思う。気に入ればオッケーである。

・総評

 カポにしては値段が高いので、個人的にはゴムを交換できる機能は維持したまま、デザインをシンプルにした廉価版を出して欲しい。ゴムも半分以上は使わないので別売にして価格を下げるのもアリではないか(ケチくせえなコイツ)。

 余談だが、10年前くらいにボディとレフィルを入れ替えてカスタマイズできるボールペンが流行ったのを思い出した。カポってギター弾きなら結構使うし、自分好みにカスタマイズできるなんて良い時代かもね。ケチだから一番安いの買ったけど(結構気に入ってる)。

 ゴムの幅が十分にあるので12弦ギターはもちろん多弦ギター向きだと思います。メタリックなデザインもあるし、メタル屋さんの7弦ギターなんかにピッタリだと思う。パッケージがオシャレなのでプレゼントにも人気だそうです。カポなのにロマンチックなもんですね。

 結果としては、少し使うのにコツは要るけど、Fenderのホッケースティック12弦使いにはもっとも適したカポだと思います(そんな物好きそうそういるとは思えないが)。この記事が全国のElectric XII、Villager、Shenandoah使いの参考になれば幸いです。

12弦ギターとJim Dunlop TRIGGER CAPO

・前回までのア=ラスシ

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再掲

 Fenderのビンテージ12弦アコースティックギター"Shenandoah"を購入した筆者。せっかく12弦買ったし7カポでHotel Califolniaのイントロを弾くぞと意気込んだものの、ネック幅の広さや弦の張力等12弦特有の要素により手持ちの6弦用カポが使えず。そして有名メーカーの12弦用カポを買うが、今度は指板Rが合わなくてダメ。調べてもFenderの7.25R指板用かつ12弦用のカポは世界中探しても存在しないことが発覚。着地点を見失ったカポ探しの旅の結末やいかに。 

・Jim Dunlop TRIGGER CAPOを買ってみた

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同じ形したパチモンが激安で売ってるね

  なんとか12弦でも使えそうな指板Rのきついギター向けのカポがないかなーと思ってダメもとで買ってみた。パチモンも出回ってるけど本家も1500円くらいなのでまあ高くはないわな。一応USA製だし。有名どころでもFenderの7.25Rの指板専用と公称してるやつはSHUBBの6弦用しかないんです。kyserは指板Rが比較的緩めの~とかのんきなこと言ってるし。で、このダンロップのはフラットな指板用とカーブした指板用が別で用意されていて、これはイケるのではと。6弦と12弦兼用ですって書いてるしね。あ、ちなみにゴムの上には自前で100均のフェルトを貼ってます。ラッカー塗装のネックだと塗装が溶けそうなので...

・ゴムの長さが足りひん...

 結果的にはFenderの12弦ギターにこのカポをつけてHotel Califolniaを弾くのはちょっと厳しい感じでした...12弦に使えると謳っているけど弦を押さえるゴム部分の幅が足りないんです。Fenderの12弦の場合、一般の12弦のネックより幅は狭めだと思うんだけど、7カポで使う場合は7フレット部の幅約52mm分はカポで押さえられないといけない。TRIGGER CAPOのゴム部分はギリギリ52mm。あと2,3ミリあればよかったかなーという感じです。

・指板Rは?

 でも単純にゴムの長さの問題だけでもない気がする。ゴム部分のRに関しては良い線いってると思います。ゲージで測ったところ9.5Rくらいでしょうか。7.25Rドンピシャではないけど一般的なカポは12Rとかなので十分フェンダー向けと言って良いでしょう。6弦では汎用のカポより全弦で良い音がします。12弦でも2カポまでなら全然使えるんだけど、微妙な指板Rの差で7カポとかだと6弦側の複弦(なんとかコースとか言うみたい)がうまく押さえられない。

・恐るべし12弦の張力

 あと弦の張力も関係してるっぽいね。TRIGGER CAPOはゴツい見た目の通り押さえる力はかなり強めだと思う。片手で握るには握力54キロの筆者でも結構きついくらいなので。それでも12弦レギュラーチューニングの張力には勝てないみたい。カポの上から手で力を加えれば全弦ちゃんと鳴るけど、手を離せばやはり端の弦が鳴らないことから、弦を押さえる力が足りてないことがわかる。

・総評

 という感じで、12弦に7カポで使うのは構造上厳しいけど、このカポなかなか気に入った。なんか音がめちゃくちゃ良いんです。汎用の安カポと比べると、アルミ素材で軽い割に押さえる力が強いからか、スコーンと抜ける音がする。金属的な音なんだけど開放弦の音にかなり近い感じ。これはアコギ用だけどエレキに使って良い音がする。別で張力軽めのエレキ用もあるけどこっちが良さそう。12弦でも2カポまでならギリギリ良い音で鳴らせます。使えなかったら売ろうと思ってたけど、普通のFender6弦エレキ用にピッタシだったので、12弦用は引き続き探しつつこれはこれで残しておこうと思います。

 あ、音は良いけど使い勝手はビミョーです。クリップ式だけど取り付けにかなり力が要るので女性が片手で取り外しするとかは難しいんじゃないかな...

 

Fenderの12弦ギターとカポタストの話

 どうも河合です。皆様いかがお過ごしだろうか。筆者はと言えば、友達のシンゾウ君が今度10万円あげるよみたいなことを言ってたので、善は急げと前から狙ってたビンテージFenderのアコギを買ってしまったのである。

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誰もが一度は憧れる(大嘘)12弦ホッケースティックヘッド

 どう?イカすでしょ。とりあえず持ってるギターがエレキばっかりでアコギを1本持っておきたかったので、普通の6弦でも良かったんだけど、なんか弦12本もあると豪華だし最悪複弦を外せば6弦としても使えるしお得じゃね?ってことで12弦を選択。ビンテージFenderのアコギの場合、6弦だろうが12弦だろうが相場はそんなに変わらないみたい。これは66年製だけど、同じ年代のストラトだと余裕でウン百万するのが10万そこらで買えるんだから個人的にはメチャクチャお得だと思う(全然違うけども)。現行のFenderでもちょうど10万しないくらいで同じようなアコギを売ってるけど、中国製だし後述するが筆者には"第一志望は、ゆずれない"並のこだわりポイントがあって駿台予備校状態なのでビンテージを買うしかなかったのである。ラッカー塗装のボロい風合いが好きとか、そもそも使ってる木材の品質が良いってのもあるけど。余談だがペグはクソのFキーなので本当はクルーソンの個体が良かったけど仕方ない。

 アコギと言えばマーチソとかギブソソが有名だし、アコギ自体にFenderのイメージは全然ないのだが、筆者はエレキはFenderしか使わないので(すまんGibson。だって好きなギタリストがFender使いばっかなんだもん)、アコギも最も"Fenderらしい"やつが欲しかったのである。現行のFenderアコギも6弦なら6連のヘッドストック、12弦ならホッケーヘッドストックなのは好印象だが、中国製でそもそも価格帯も低いのがエントリーユース向けな感じがするし(ろくに弾けやしないんだから身の丈に合ってはいるが)、一番許せないのはネックジョイントがボルトオンじゃない点。

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泣く子も黙るボルトオンアコギ

 そう、ネックジョイントがボルトオンなのはビンテージだけなのである。まともなアコギを使う人からしたらバカじゃねえのって感じの仕様だが、何ともFenderらしいではないか。画像を見て想像できるように、このネックはクソ長いネジによってエレキと同じようにボディと結合されている。ボディ自体は15 3/8インチのドレッドノートでよくある感じ。これは"Shenandoah"というモデル名(アメリカの地名が由来)だが、6弦の"Kingman"とボディは共通であり、Kingmanの12弦版として発売されたらしい。ネックはどうせ同時期に発売された12弦エレキの”Electric XII”の使い回しだろうと思ったが、よく見るとヒール部分がアコギのボディシェイプに合わせて2フレット分ほどヘッド側に移動しており、専用品であることがわかる。ちなみに、ビンテージFenderアコギは基本的にネックエンド部がサウンドホールの形に合わせてエレキとは逆のRにカットされているが、本個体のようにストラトなどと同じネックエンドを持つ個体もたまに見られる。ゆえにネックはストラトのボディに流用して12弦エレキもどきを作ろう...なんて考えてしまった筆者であるが(ビンテージのElectric XIIは高いからね)、先述したヒール部分の位置の違いからなんとも不格好になってしまいそうである。あとジョイントの位置も違うので、流用する場合はネック側に穴を開け直す必要があるが、ビンテージに余分な穴を開けるのはもったいないのでやりたくない。

 ヒール部分の位置の違いを除けば、Electric XII、つまり12弦エレキのネックと全く同じと考えて良いだろう。12弦ギターは弦が多い分、設計上6弦のネックよりもナット幅が広くなりがちだが、他の12弦ギターと比較してナット幅が狭く、6弦のエレキから持ち替えても違和感が小さいという評判である。Fender製ギター・ベースのネックのナット幅にはA〜Dの4種類あり(Dは存在自体怪しいが)、本個体に限らず12弦ギターはナット幅約44.5mmのCネックである。Cネックはプレシジョンベースで採用されているのが有名である。ちなみにストラト等通常の6弦ギターはナット幅約41mmのBネックである。実際に弾いた感触としては、言われてみれば6弦エレキと比べれば若干幅広な感じもするが、個人的に慣れ親しんだ184RのRのきつい指板だし、プレシジョンベースの幅広ネックにも慣れているのでちっとも違和感は無い。複弦を外して6弦ギターとして使っても全然問題無さそうである。

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最悪ホッケースティックとしても使えそうだ

 せっかく12弦なのでしばらくは12弦として使いたいのだが、12弦特有の問題もある。なにせ弦の本数が2倍なので、張力がハンパじゃないのだ。本個体に関してはネックよりもボディ側の負担が大きいようで、ネックは50年以上前の製品であるにもかかわらずストレートでトラスロッドの余裕もありそうだが、ボディはチューニングを上げるにしたがってトップのブリッジの後ろの部分が少しずつ浮いてくる。構造上多少の浮きは仕方ないのだろうが、この尋常でない張力に負けてなのか、トップには割れを修理した形跡もある。長期の使用を見据えれば、レギュラーチューニングまで上げて使うよりも、せいぜい1音下げで2カポぐらいで使った方が心臓に優しい気がする。

 2カポで使うのは良いんだが、ここで問題発生。当然と言っちゃ当然なんだが、普通の6弦用のカポが使えないのである。2カポならまだしも、「12弦買ったし、7カポ(1音下げでBmなら9カポだが)でとりあえずHotel Califolniaのイントロでも弾くか」なんて夢のまた夢だったわけである。問題は2つある。第一に幅の問題。6弦用のカポは弦を押さえるゴムの部分の長さが大体約50mm前後で作られてるらしい。実物は持っていないが、有名どころだとKyserのKG6は約48mm、SHUBBのC1は約50mmだそう。筆者が使っているオレンジ色のKyserもどきとダダリオのNSカポは共に約53mmで少し長めだった。これに対し、今回買った12弦アコギでは、(レギュラーor1音下げで原キーでHotel Califolniaを弾くことを前提として)7フレットの幅が約52mm、9フレットでは約53.5mmであった。どうりで6弦と1弦がゴムの長さ不足でちゃんと押さえられないわけである。そもそも7カポとか9カポってキチガイじみているが、6弦エレキでは7フレットで約48mm、9フレットで約49.5mmであり、筆者所有のカポでは普通に押さえられた。KyserやSHUBBだと6弦でも7カポ9カポは厳しいのかもしれない。

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カポがいっぱいホテルカポフォルニア

 じゃあ12弦用のカポを買えばええやんということでG7thの12弦用Newportカポ(写真の銀色のやつ)ってのを買ったんだが、これが完全に勇み足だった。これは太い弦と細い弦が交互に並ぶ12本を均等に押さえられるようにゴムに溝が掘ってあるスグレモノなんだけど、低音弦側の溝が弦をしっかり押さえようと入り込むのが裏目に出てか、高音弦側が浮いてしまって弦を押さえられず、全く使い物にならない。まだ6弦用の普通のカポの方が端の弦を犠牲にすれば使えたのでマシだった。ここでこのG7thのカポがギター側の指板Rと全く合っていないことに気付く。第二の問題、指板Rの問題である。FenderのRがキツい指板に対してカポのゴム部分がフラットすぎるのである。この製品は決して悪くない。一般的な12弦アコギに使えば真価を発揮できるであろう。 

 カポの世界も奥が深いものである。7年ぐらいギターをやっているが、カポと指板Rの関係なんて考えたこともなかった。そもそも今まで使っていた2つのカポも、Fenderの指板Rにピッタリというわけではないことがわかった。カポなんて汎用品だから、大体のギターで普通に使うポジションが押さえられるものが良いとされるのだろう。改めて6弦のFenderエレキを7カポ9カポで弾いてみると、まあ使えなくはないが端の6弦1弦の押さえが甘く軽くビビっている気がしてならない。

 カポの御三家と言われるKyser、SHUBB、G7thの中でもとりわけSHUBBは指板Rに敏感なようで、Fenderの指板R専用のC4というモデルを出している。逆に、世にこれ以外にはFenderの指板R専用のカポは存在しないということになる。様々な指板Rに対応した高級カポなるものもあるが、カポなんぞに大枚を叩きたくはないので考えないでおく。6弦エレキならSHUBBのC4を買えば済むが、今回必要なのは"12弦用の、Fenderの指板R専用のカポ"であり、条件を満たさない。ゴム部分の長さが50mmの6弦用C4でも、ナット幅が44.5mmの12弦ギターの2カポ程度ならギリ使えそうだが、7カポあるいは9カポでHotel Califolniaなんてもってのほかである。

 そもそも12弦ギター自体需要がないし、12弦用のカポも選択肢が少ない。ありがたいことに上述した御三家はいずれも12弦用のカポを出しているが、ピカイチと思われたG7thのものは指板Rが合わず今回は適さなかった。Kyserも6弦用のKG6の話であるが、Rの緩めなギター用と謳っているので12弦用も多分ダメだろう。SHUBBの12弦用C3もベースはFender用のC4ではなく汎用のC1なのでこれもダメ。結局、Fenderの12弦ギター用のカポはこの世に存在しないという悲しい結果になってしまった。

 現行も含めてFenderの12弦アコギを持ってるオタクなんて世界全体でも雀の涙ほどしかいないと思うけど、エレキの方のElectric XIIはそれなりに有名で持っている人も多少はいるはずである。彼らはカポを使いたい時はどうしているのだろう。どうりで調べてもElectric XIIにカポをしている情報が出てこないわけである。

 事態は完全に迷宮入りしているが、ここでかすかな光明が。Jim DunlopのTRIGGER CAPOというやつが何やら使えそうな感じがする。エレキ用、アコギのフラットな指板用、アコギのカーブした指板用、クラギの真っ平な指板用のラインナップがあり、アコギ用には12弦にも使用可と記載がある。クラギ用のみ他ブログでレビューがあり、ゴム部分の長さは約66mmもあるそう。見た感じエレキ用とアコギ用も同じ長さがありそうなので期待が持てる。これで指板Rさえ合えばドンピシャである。早速注文したがダメならG7th共々売りに出して最終手段、SHUBBの12弦用を無理やり曲げる手段に出るしか方法がない。TRIGGER CAPOの結果が出てからちゃんと記事にすれば良いものの、気が気じゃないのでバカブログを書いて到着待ちしている次第である。誰かがカポ業界に革命を起こしてくれることを祈るばかりである。

東京事変 ニュースフラッシュ セトリ・ライブレポート

 毎度更新が滞りまくっている河合です。この前も連載やるとか意気込んでましたが、結局多忙で2週間ぐらい放置してます。まあこんなブログ知り合いしか知らないだろうし(読んでくれてありがとう)お許しいただきたい。そのうち気が向いたタイミングで続きは書きます。

 さて、昨日(3/1)は東京事変の復活ツアー"ニュースフラッシュ"の東京国際フォーラム2日目の公演に行って参りました。やっぱり前日の閏日公演が一番良かったんだろうけど、奇しくも同日に自分が事変のコピバンでライブに出る予定があり、やむなく2日目を希望。色々と世間で騒がれてますが至って普通に開催されました。アルコール消毒等の防疫対策は徹底されていたものの、会場内で異様な場面は一切見られず。

 せっかくなので物販の情報でも書いておくか。もしこれから別公演を観に行かれる方がいましたら、物販は来た順で並ぶパターンではなく整理券方式なので注意が必要。17時開場で筆者はテキトーに14時頃会場入りしましたが、16時に集合・販売開始の整理券を渡されました(整理番号は確か1848番)。整理券を貰って2時間後に再集合して買う、という認識で良さそうです。それでも大体希望のものは買えましたが(グレーのTシャツLとXLがタッチの差で売り切れて泣いた)。寒い中並ばずに他で暇を潰して集合時間に戻ればすぐ買えるので良いシステムだと思います。ストールが大人気のようで整理番号100番も行かないうちに売り切れたとか。8時に会場入りして買えなかった人もいるみたい。今回はステッカーもすごく早く売り切れるので注意。19年の林檎博で売り切れて問題になった手旗に関しては心配しなくて良いと思います。ちなみに、整理券方式は会場前の"先行販売"に関してだけであって、16時過ぎくらいからスタンダードな先着式に変わります。これだと開演に間に合わない可能性・売り切れの可能性共に高いので、遅くとも開場の2~3時間前には来場して先行販売で買っておくのが無難でしょう。おそらく国際フォーラム以外の会場でもこの方式が採られると思いますが、変更される可能性もありますのでご留意ください。筆者は一切責任を持てませんので...。

 それでは本題のライブレポートに移りましょう。セトリは以下になります。国際フォーラムの2公演で変化無し。今後の公演も同セトリで行われると思われます。

  

1. 新しい文明開化 (緑テレファントム伊澤TL)

2. 群青日和 (Squier Venus、伊澤TL)

3. 某都民 (緑テレファントム)

4. 選ばれざる国民 (緑テレファントム)

5. 復讐 (MICRO-FRETS SWINGER、伊澤LP)

6. 永遠の不在証明 (MICRO-FRETS SWINGER)

7. 絶体絶命 (MICRO-FRETS SWINGER)

8. 修羅場 (緑テレファントム)

9. 能動的三分間 (緑テレファントム)

10. 電波通信 (緑テレファントム)

11. スーパースター (白テレファントム)

12. 乗り気 (白テレファントム)

13. 閃光少女 (緑テレファントム、伊澤TL)

14. キラーチューン (緑テレファントム)

15. 今夜は空騒ぎ (緑テレファントム)

16. OSCA (RS Guitarworks Workhorse)

17. FOUL (RS Guitarworks Workhorse)

18. 勝ち戦 (RS Guitarworks Workhorse)

19. 透明人間 (緑テレファントム)

20. 空が鳴っている (黒ストラトファントム、伊澤LP)

 

 曲名右に書いているのは浮雲・伊澤両氏の使用ギター。椎名さんギタボの曲はいつものGibson RD Artistを使用。亀田さんはYAMAHA BBをチューニング違いで数本持ち替えていました。ライブレポートと言いつつ機材レポートになっちゃいそうですね。オタクだから。と言っても足元とアンプに関しては一切見えませんでしたが...。後日ギターマガジン等で特集が組まれるのを祈るばかりです。

 まず注目すべきは浮雲のメインギター。かの有名な白のSongbird製テレファントムの復活を期待したファンも多いと思いますが、なんと新調されていました。新しいテレファントムはボディカラーがサーフグリーンでピックガードは黒かべっ甲(遠目では判断できず)、そしてメイプル指板というスペック。かなりのイメチェンですね。上記セトリのように多くの曲で白のテレファントムに代わってメインギターとして使われています。今後はこちらがメインになるのではないでしょうか。誰もこんな意味不明なオタクの耳なんて信用しなそうですが、白と緑で音が結構違う気がしました。というのも、中盤の"スーパースター"・"乗り気"の2曲だけ白が使われ(復活おめでとう)、この2曲のギターが突出して良かったんです。指板材の違いなのか弾き込んだ時間と量の違いなのか、緑よりも抜けが良かったと思う。終演後黒猫堂からアンケートが来たんですが、ベストアクトには迷わず"スーパースター"を挙げました。あのギターソロを聴いて完全復活を実感しましたね。新しい緑色のテレファントムもすごくお似合いだったので今後の活躍が期待されます。

 本公演で他に活躍したのはMICRO-FRETS製SWINGERとRS Guitarworks製Workhorseの2本。この2本はご本人のツイッターでも最近の投稿で紹介されています。SWINGERは"絶体絶命"のアーミング用ですね。テレキャスターのボディにジャズマスターのマイクとトレモロを付けたような可愛らしい印象のビザールギター。アーミング用のギターとしては、以前はシルバー(今はフランス国旗のようなトリコロールカラーになっている)のモズライトが用意されていました。モズライトの音はパワフルな印象でしたが、SWINGERは大人しくメロウなイメージで今回のステージ全体の雰囲気に合っていましたね。"絶体絶命"自体バンドで演奏されるのは10年前のウルトラC以来(Bon Voyageでは椎名さんとダンサーの踊りのBGMとして打ち込み版が流されたのみ)なのでやってくれて感動した。"復讐"もSWINGERで演奏されましたが、この曲が定番曲揃いのセトリに入っているのは意味ありげですね。新曲"永遠の不在証明"もこのギターで演奏されました。RS Guitarworks製のギターに関しては、事変解散以降のペトロールズや他アーティストのサポートでお馴染みかと思います。本公演で使われたのはテレキャスターのボディにP-90タイプのPUを乗せたWorkhorseというモデル。"OSCA~FOUL"でエネルギッシュなサウンドを奏でていました。"勝ち戦"のボトルネック奏法にもすごく似合っていましたね。これらのギター以外にも、"群青日和"では事変解散前・解散後のサポートで時々登場していた黒い12弦のSquier製Venus、最後の"空が鳴っている"では、解散前からこの曲専用のギターとして定着していた黒のSongbirdストラトファントムが使用されました。伊澤さんはギター担当の曲では解散前から使っていたギブソンレスポールと、今回は新たにテレキャスターを使用。色はなかなか変わった色で茶色~ゴールドのメタリックでした。

 全編を通してMC・アンコールはなく、解散前と変わらずプロ意識の高いライブでした。衣装の変更も少なかったように思います。"新しい文明開化"でライブが始まったときには、椎名さんは真っ赤な衣装に小林幸子を彷彿とさせる大きな孔雀の羽を背負い、男4人は首に土星の輪っかのような白い飾りを付け、中世の聖職者のような装いでした。それ以降の衣装に関しては、正直演奏に聴き入りすぎてあまり覚えていません。椎名さんは終盤は黒いシースルーのセクシーな衣装でした。1時間半があっという間に過ぎ、復活を確認させるに十分な素晴らしいライブでした。今後の公演を観覧される方は、ぜひ体調にお気をつけてお楽しみください。

 

 

 

名越その一 BIG MUFF

 名越由貴夫と言えばビッグマフ、ビッグマフといえば名越由貴夫。世界レベルではDinosaur Jr.のJ・マスシスが一番有名かもしれないが。electro harmonixのBIG MUFF πといえばギターを弾く人なら誰でも知っているであろう最強のファズペダルである。名越のみならず、90年代日本のハードコアシーンではbloodthirsty butchers吉村秀樹(コーパスグラインダーズでは3人のギタリストが各々異なる時期のビッグマフを使用していたとか)やCOWPERSの竹林現動などがこぞって愛用し、そのサウンドメイクにおいて欠かせない要素になっていた。

 ライター顔でかっこいい前書きを書いた気になっているが本題に移りましょう。名越さんがメインで愛用しているのはオタクの間では"3rd"とか"V3(VはversionのV)"とか呼ばれているもの。見た目的にはその辺の中古屋で激安で売ってる現行ものとソックリなやつですね。まあ現行が3rdのデザインをリイシューしたんですが。ビッグマフって製造時期によって外観も違えば音も違うんですよ。著作権がアレだから画像は載せないけど、一応大まかにまとめておくと以下のようになる。

  1st:トライアングル

  2nd:Ram's Head(ラムズヘッド)

  3rd:3rd(←そのまんまかよ)

  4th:シビルウォー

  5th:アーミーグリーン

  6th:黒ロシアン

  7th:現行

 ギター弾く人はどれも一度は聞いたことのあるような通称だと思います。この際各々の違いはどうでもよくて、実はこいつら最初のトライアングルから現行まで回路はほとんど同じなんですよ。数個のコンデンサーとか抵抗の定数、あとトランジスタの種類(トランジスタには定格があって、定格の範囲内に収まれば縁もゆかりもない西宮市みたいなやつも流用できるくらいの汎用性がある)が違うだけ。逆に数個のパーツの違いで時期ごとのサウンドキャラクターの違いが生じるわけですね。さらに同じ時期のものでも個体差が大きいそう。

 なんだかんだで3rdのビッグマフを買えば同じ音出せるんじゃね、という気がするがそうは問屋がおろし金。前書きにも書いたが、名越さんの個体は確かに3rdだけど中のパーツはほとんどご自身の手によって取り替えられてるんですよ。おまけに「6種類のレンジを選択できるようにスイッチを追加」「配線材は極太のシルク被覆で自作」とか、もう訳がわからん。雑誌に出血大サービスで中身の写真も掲載されていますが、変更されたパーツの定数までは載っておらず。完全に同じ物を作って同じ音を出すのは不可能なんですね。

 ちなみに、さらに3rdの中でも大きく分けて3種類あって、まず2ndのラムズヘッドと全く同じ基板(EH3003)のやつ、次にトランジスタでなくオペアンプ(IC)を使用したもの、そして名越さんの改造元になったEH3034という従来のものより小型の基板が採用された、通称"V6"と呼ばれるものが存在します。このV6、ヴィンテージのビッグマフの中でもかなり地味な存在で、リイシューがほとんど出てないんですよね。3rdのラムズ基板のはラムズに含めるとして、オペアンプのも含めて最近はどの時期のビッグマフでも本家エレハモ含め各メーカーからリイシューやクローンが出てるのに...。唯一Big Knob PedalsというメーカーがNYC'81という名前でドンズバのV6クローンを出してて気になるけど、日本国内で流通がなくebayでしか売ってない。クローンはおろかヴィンテージのV6を買ってもドンズバの名越サウンドは出ないんだからビミョーな気がする。

 じゃあどうすりゃええんや!V6をベースに自作してパーツの定数をコロコロ変えて気長に探っていくのも面白そうだけど面倒くさい。ここは楽をしましょう。結論としては、妥協してラムズのリイシューを買うのが一番気軽にそれっぽいサウンドを出せそうな気がしています。

 なんでいきなりラムズなの?って話ですが、名越さんがビッグマフ含め歪みエフェクターをモディファイする理由って大体「レンジを広くするため」なんですよね。そして、歴代ビッグマフの中でそのレンジの広さで最も人気があると言っていいのが2ndのラムズなんです。名越さん本人もラムズを所有していて(おそらくこれも改造されているが)、現場の足元にもメインの3rd改と同じくらいの頻度で登場していることからかなり気に入っている模様。ラムズといえば吉村秀樹の代名詞でブッチャーズのkocoronoのジャケにでっかく載ってるアレですね。

 メインの3rd改の素性が不明な以上、上記のような言葉や状況から推察して、ラムズが一番イメージ的に近い音が出そうな気がしています。ヴィンテージのラムズは高嶺の花だけど、最近になって本家が出してくれたリイシューは常識的な値段で買えます。しかも取り回しの良いMXRサイズ。ビッグマフはデカい筐体じゃないとダメだって意見もありますけどね。

 ちなみに筆者は黒ロシアンとハ◯ドオフで入手した誰かが自作した意味不明なクローンの二つを使ってます。zoomのマルチストンプのGREAT MUFFなんかも良いと思いますよ。現行も良いんじゃないかな(結局なんでもいいのかよ)。ビッグマフって基本の回路は同じでもキャラクターの違いで何台も揃えたくなる気持ちわかりますね。名越さんも8台くらいは持っているけどまだまだ欲しいそう。

 名越さんの3rd改の音は数多くの音源やライブ映像で視聴できますが、椎名林檎推しの筆者は"虚言症"のバッキングが一番好きですね。ポップスのバッキングでビッグマフ踏みっぱなしってあり得ます?実は、椎名さんの2nd"勝訴ストリップ"の中でも"本能"と"虚言症"だけ名越さんが弾いていて特別感がある。東京事変がひと段落してできた"三文ゴシップ"から近年までの椎名さんのソロ作品でも名越ギターの聴きどころがたくさんあります。"虚言症"のバッキングは音源も良いんだけど、2015年のライブ"百鬼夜行"のバージョンはアンコールの最後の曲という雰囲気もあってか激ヤバですね。DVD持ってる人じゃないと観れないのが惜しい。

 ひっちゃかめっちゃかな記事になってしまいましたが、こんな感じで次回以降も進めていきたいと思います。次回は意外と知られていない名越さんのメイン歪みに切り込んでいきます。しくよろ。

 

 

THE EFFECTOR BOOK Vol.37 (勝手に)連動企画 名越由貴夫さんの機材特集

 こんにちは。ブロギの更新が停滞しまくっている河合です。書きたいこと千個ぐらいあるんだけど毎回気合い入りすぎて時間かかっちゃうし...と言いつつ気が向いたので連載みたいのをやろうと思います。小出しにしたら毎日ちょっとずつ続けられそうだしね(本当に?)。

 どうでもいい前置きはさておき、今回は名越由貴夫さんの機材特集を書きたい、書かせてください。スタジオミュージシャンとして数多くの有名J-POPアーティストのサポートを務める一方、Co/SS/gZ(これでコーパスグラインダーズって読むんだから笑っちゃうよね)という超アンダーグラウンドなバンドを本拠地とする神出鬼没なギタリスト、名越由貴夫。(←雑誌みたいな紹介)

 筆者は椎名林檎さんに心酔していて、あだ名がリンゴになるくらいのオタクなんですが(紛らわしいので椎名さんと呼んでいる)、椎名さんしか聴いてなかった頃は名越由貴夫と言えば「椎名さんのクレジットによく書いてある人」「ライブとかでギター弾いてるロン毛の人」というイメージしかなかった。で、ここからが息を飲むような展開(勝手に飲んでろ)。

 椎名さんが98年のデビュー前後にナンバーガールの追っかけをやっていて、そのナンバーガールでフロントマンをやっている向井秀徳が影響を受けた札幌の男臭いバンドたちのうちの一つが、故・吉村秀樹(ナンバガのひさ子さんの夫ね)の率いていたbloodthirsty butchers。このブッチャーズのプロデューサーが名越由貴夫で、先述したCo/SS/gZで吉村秀樹とも共演していた(余談だがブッチャーズのkocoronoのジャケはコーパスのzeroが手がけた)。長々とオタク語りをしましたが、一人の椎名さんの追っかけがこういう流れで名越さんのファンになりましたよ、と。

 名越さんって知ってる人は知っていてすごく有名だと思うんだけど、本質的なサウンドメイクに関しては謎が多いんですよね。ネットで検索してもほとんど引っかからないのが現実。名越サウンドをマネするにはどうしたらええんや〜!と唸っていた矢先に、THE EFFECTOR BOOK Vol.37に名越さん特集があるという情報を知り即購入。これが名越フリークにとっては永久保存版だった。シンコーミュージックの回し者じゃないけど、名越さん好きで持ってない人は是非買ってください。これ買って再現したいライブの映像見れば、ネットに情報無いのがウソみたいに名越さんのサウンドメイクがわかります。はっきり言ってこんなブロギ読むより5億倍価値あります。

 ...と言いつつ雑誌買って読んでね、だけじゃ悲しいので、雑誌と勝手に連動した拡張版と称して補足的な情報を連載していこうと思います。テーマは「コピーする上での再現性」。雑誌を読めばわかるけど、名越さんってまともなエフェクターを使わないんですよ(そこが良いのだが)。見た目は普通でも大体のエフェクターは改造されてます。メインのビッグマフなんて中身ほとんど取っ替えてますからね。定数が載ってれば自作できなくもないんですが、企業秘密だろうか、さすがにそこまでの情報は公開されていません。ゆえに本人と全く同じ機材を揃える事実上不可能。あと、希少価値や値段的にジリ貧オタクには入手しづらいものも多い。というわけで「コレを使えば似たような音を作れる」的な、コピーをする上で役立つ情報を載せていこうと思います。

 あと、「このエフェクターを使った名演」みたいのも紹介したい。筆者は椎名さんのオタクなので大体椎名さんの曲になると思いますが...。なので、椎名さんファンの人にも「この曲のこの部分は実はこうやって作られていた!」みたいに発展的な楽しみ方をしてもらえるような文章にしたいと思います。記事の紹介だけで結局5000時間くらい食われているんだが、できれば毎日、1日1機材という形で更新できたらなと思います。しくよろ。